LINE API Use Case
待ち時間を有効活用&インバウンド強化!水族館レストランが実現したLINEミニアプリ導入事例
待ち時間を有効活用&インバウンド強化!水族館レストランが実現したLINEミニアプリ導入事例
株式会社西鉄ストア 鬼木 昭人氏 / 株式会社西鉄ストア 谷川 潤一氏 / 株式会社海の中道海洋生態科学館 藤丸 亜矢氏 / LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社 依田 所花氏
2025年2月6日
福岡市にある水族館「マリンワールド海の中道」は、家族連れや海外からの来場者を中心に、連日賑わっています。水族館内の人気レストラン「Reilly」は、混雑による待ち行列を、順番待ちLINEミニアプリを導入したことで解決しました。LINEミニアプリは、Reillyの顧客体験と従業員体験をどのように変えたのでしょうか。 Reillyを運営する株式会社西鉄ストア 鬼木 昭人氏・谷川 潤一氏、株式会社海の中道海洋生態科学館 藤丸 亜矢氏、LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社 依田 所花氏にお話を伺いました。聞き手は、LINEヤフー株式会社 河本 貴史が務めます。
株式会社西鉄ストア 鬼木 昭人氏

株式会社西鉄ストア 鬼木 昭人氏

フード事業部 店舗開発 課長。直営飲食店の店長としてキャリアをスタートし、その後本部営業職に転身しました。
現在はフード事業部の店舗開発として活動しており、新規出店や店舗の働きやすい環境づくりに取り組んでいます。

株式会社西鉄ストア 谷川 潤一氏

株式会社西鉄ストア 谷川 潤一氏

株式会社西鉄プラザに入社後フランチャイズ事業など主に洋食のレストランに従事。
商品開発や営業管理を経て、2018年より西日本鉄道株式会社が運営する観光列車の立ち上げ・営業を担当。2024年より株式会社西鉄ストアマリンワールドレストランの店長としてこれまでの知見や経験を活かした商品・サービスを提供できるよう奮闘中。

株式会社海の中道海洋生態科学館 藤丸 亜矢氏

マリンワールド海の中道 営業部企画広報・教育担当 藤丸亜矢氏

1992年マリンワールド海の中道入社。入社後展示部に配属、イルカ飼育担当となる学習交流課では教育部門に携わり、ダイバーショーや実験コーナーMCを経て2011年営業部へ異動。
2017年の全館リニューアルでは広報全般を担当し、ロゴ変更、空間コンセプトに携わった。

LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社 依田 所花氏

LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社 スマートシティ本部 福岡推進チーム 依田 所花氏

2023年入社。行政や民間のLINEを活用したDX化の企画提案:プロジェクトマネジメントに携わる。

人気レストランならではの悩みをLINEで解決

河本 Reillyが順番待ちLINEミニアプリを導入した背景には、どのような課題が存在したのでしょうか。

鬼木 Reillyは館内で唯一のレストランであり、イルカを眺めながら食事を楽しめるというユニークな魅力も持っています。そのため、特に土日祝日には多くのお客様が訪れ、ピーク時には待ち時間が2時間に及ぶことがあります。従来は紙のウェイティングリストに名前を書いていただき、順番に名前を呼んでご案内していました。名前が呼ばれるまでその場から動けないので、待ち行列が発生する要因になっていました。お客様にとっては、マリンワールドに入館する際にもチケット購入や駐車場での待ち時間があり、それに加えてレストランでも長い時間待つことになるため、大きなストレスの要因となっていました。このような状況での接客は従業員にとっても負担となり、お客様に対して従業員が萎縮してしまい、接客の質が低下してしまうこともありました。

河本 お客様にはたくさん来てほしいけれども、待ち行列ができると顧客満足度が下がってしまうという、一種のジレンマがあったということですね。

鬼木 はい。私たちは、さまざまな面でお客様の満足度向上を目指しています。オペレーションの改善やスタッフのスキルアップに取り組んでもなお生じてしまう待ち時間を、お客様にどう有効活用してもらうかが大きな課題でした。
そこで導入したのが、順番待ちLINEミニアプリです。お客様がレストラン前の列に並ぶ必要がなくなり、その時間で、イルカショーやペンギンコーナーなど水族館内を回遊できる時間が増えると考えました。

順番待ちLINEミニアプリで待ち時間を有効活用 顧客体験と従業員体験が向上

河本 順番待ちLINEミニアプリを導入した経緯を教えてください。

鬼木 前提として、Reillyの母体である西鉄グループは、LINEヤフーコミュニケーションズとの協業のもとで、LINEによるDXを進めています。マリンワールドと待ち行列対策について協議をしていく中で、西鉄情報システムから、西日本鉄道で採用されたLINEによる定期券の順番待ちシステムを導入してはどうかと提案を受けたことが、LINEを知ったきっかけです。私たちのニーズとまさに一致していたので、2021年4月に順番待ちLINEミニアプリを導入しました。

河本 順番待ちLINEミニアプリは、具体的にはどのような使い方をするのでしょうか。

谷川 満席になると、順番待ちLINEミニアプリのQRコードを印刷した看板を出します。お客様は、QRコードを読み取ってLINEミニアプリを起動します。ミニアプリの画面には現在の待ちグループ数が表示され、お客様は、大人・子供の人数を入力して順番待ちの登録を行います。順番が近づくとLINEの通知で呼び出しを受け取ることができます。

河本 LINEミニアプリ導入後のお客様の反応はいかがでしょうか。

鬼木 待ち行列の問題が解消された結果、今は誰も並ぶことなく、待ち時間を利用して水族館を見て回っています。お客様からのアンケートでも、利便性が大幅に向上したという声を多くいただきました。以前は待ち行列に関する苦情が多かったので、大きな改善だと言えるでしょう。

依田 従業員にも影響がありましたか。

鬼木 これまでは、従業員がお客様の不満の受け皿になってしまい、従業員にとっても大きなストレスになっていました。しかし、順番待ちLINEミニアプリでは推定待ち時間が表示されるため、従業員が説明するよりも、お客様自身の目で確認することで納得感を得られています。そのおかげで従業員の直接的な対応も軽減され、余裕ができた分今では、お客様への積極なお声掛けや、元気な挨拶など、接客面でも良い効果が出ています。

河本 順番待ちLINEミニアプリは、マリンワールドのLINE公式アカウントとも連携していると聞きましたが、どのような仕組みなのでしょうか。

藤丸 Reillyのお客様が順番待ちLINEミニアプリを利用すると、マリンワールドのLINE公式アカウントに友だち追加されます。その結果、当館公式アカウントの友だち獲得数がLINEミニアプリ導入前に比べ、約6倍にまで増えました。
お客様が友だち追加すると、当館のお土産ショップで使える10%オフクーポンを直ちに送るように設定しています。お客様にとってもお得ですし、お土産ショップの売上にも貢献しています。また秋から冬にかけて、一般的には水族館の来場者が減る傾向があります。そこで、LINE公式アカウントで、イベント情報や動物・お魚の情報を発信することで、お客様の来場を促す施策にも活用しています。
年間通してLINEで情報発信を続けているので、友だちになったお客様の満足度が高く、ブロック数も少ないです。マーケティング面でも、かなり効果的だと感じました。

LINEミニアプリのインバウンド機能で海外客の待ち行列も解消

鬼木 LINEミニアプリの活用で、LINEを利用するお客様の順番待ちの課題は解消されましたが、LINEを持たない特にインバウンドのお客様には引き続き、紙の整理券をお渡ししていたため、レストラン前でお待ちいただく課題が残りました。そこで、LINEヤフーコミュニケーションズの依田さんにご提案いただき、WebブラウザからでもLINEミニアプリの機能を利用できる「インバウンド機能」を新たに搭載しました。

河本 インバウンド需要が大きな盛り上がりを見せていますが、実際のところ、海外のお客様はどのくらいマリンワールドに来場していますか。

谷川 感覚ですが、お客様の3割ぐらいは海外からの来場という印象です。多いときには4割近くが海外のお客様ではないでしょうか。

河本 「インバウンド機能」をいち早く導入していただきましたが、実際に使ってみていかがでしょうか。

谷川 インバウンド機能の導入前は、海外のお客様も、紙の整理券で順番待ちをしていました。今は日本のお客様と同様に、スマホで順番待ち登録をし、館内の他の場所を見て回れるようになりました。特にアジア圏は、スマホなどのデジタル活用については日本よりも先進的なので、利用者も慣れています。特にスタッフへの質問もなく、スムーズに利用しているようです。
インバウンド機能のお陰で、整理券を渡して端末に入力する作業をさらに減らせたので、効率化もできました。もちろん、高齢者や、どうしてもスマホで読み取れないお客様のために、引き続き整理券対応も必要ですが、件数にすればとても少ないです。

鬼木 多言語対応では、まずメニューで利用言語を選ばせるなど、お客様の操作の手間が増えてしまいがちで、その分手順説明が必要になることが多いです。その点、順番待ちLINEミニアプリの良いところは、お客様が普段スマホで利用している言語で、すぐに機能を利用できる点です。アプリ自体も、席を人数分予約するだけで、余計な機能がないので、初めて来た海外のお客様でも、簡単に利用できるのでしょう。

依田 補足すると、順番待ちLINEミニアプリは、スマホのシステム言語が繁体中国語・簡体中国語・韓国語であれば、その言語に対応した画面を表示します。それ以外の場合は、英語で表示する仕組みです。

河本 利用者にとっては無駄なステップがなく、従業員にとっても対応の工数を減らせるので、メリットしかありませんね。インバウンド機能に良い反応を頂けて、私たちLINEヤフーも嬉しいです。

デジタル化は目的ではなく手段 お客様にもっと良いサービスを

河本 最後に、Reillyでの今後の取組みや、実現したいサービスの構想があればお聞かせください。

鬼木 現在は席の順番待ちのみの対応ですが、将来的にはスマホで注文や決済ができるテーブルオーダーを導入したいと考えています。特に海外のお客様は現金決済を好まない傾向がありますが、現状では券売機が現金のみの対応となっており、それ以外の場合はレジでの決済が必要です。また、レジでは多言語対応が十分ではないため、対応に手間がかかり、さらにレジ周辺が混雑するなど、さまざまな課題が発生しています。スマホでそのまま注文・決済までできれば、お客様の手間も減り、店舗の運用効率向上やコスト削減にも繋がります。

河本 店舗のデジタル活用をさらに推し進める方向性ですね。

鬼木 デジタル化が進むことで、私たちの手が空いた分をお客様へのサービスに充てることができます。デジタルは、私たちが楽をするためのものではなく、サービスに付加価値を加えるための手段だと考えています。そのため、LINEを含むデジタルの力を活用して、さらに良いお店を目指していきたいです。
例えば、テーブルオーダーのような仕組みを導入すると、年輩のお客様から「やり方が分からない」「不便になった」とお叱りをいただくことがあります。そういう時でも、従業員が声をかけて教える手間を惜しんではならないと思っています。

依田 サポートが不要な人にはセルフサービスで便利さを享受してもらい、手をかけるべき人には手厚くサポートするためのデジタル化ですね。

河本 デジタルの取り組みでは、単にコスト削減や効率化を追求する便利軸だけではなく、お客様に価値を提供するための意味軸が重要になりますね。LINEヤフーとしても、今後もこうした取組みを支えていきたいと願っています。本日はありがとうございました!

(取材日: 2025年2月6日: 取材/大場 沙里奈)

LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社 企業ロゴ
企業名LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社
URLhttps://lycomm.co.jp/ja/

会社の紹介情報

LINEヤフーの100%出資子会社で、LINEヤフー関連サービスの運営・テスト・カスタマーサポート・企画・マーケティング・セールス・クリエイティブなど各種運営業務を担っています。また、LINEヤフーグループが提供するサービスの新たな価値創出を目的に、自治体・民間と共働し、暮らしをより便利で豊かにするスマートシティのプロジェクトも推進しています。

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